数年前から、日本国内でもデジタルトランスフォーメーション(DX)という単語を耳にすることが多くなってきました。

DXの需要は、少なくとも2025年に向けて右肩上がりに高まっていくでしょう。
今回は、これから多くの日本企業が取り組んでいくDXの本質について、取り上げてみます。

DXとは何か?

現状、DXという単語は、使用される文脈によって定義が異なっています。

2004年、スウェーデンの大学教授が提唱した「ICTの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させるデジタルトランスフォーメーション」という概念が、DXの基本とされていますが、日本のビジネスシーンで使用するDXは、大きく意味合いが異なります。

現代の日本におけるDXの本質を理解するためには、そのきっかけとなった事柄を突き止める必要がありそうですね。

ビジネスシーンにおけるDX

2018年、経済産業省からひとつのレポートが発表されました。このレポートこそ、日本でDXが認知されたきっかけになっているのです。

<レポート名>
DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~
出典:経済産業省

世間的に、DXを単にRPA等と同一化している雰囲気も感じるのですが、上記レポートを読むと分かる通り、DXとRPAは意義そのものが異なります。
その証拠に、全57ページに及ぶこのレポートでは、「RPA」という単語は1度も使われていません。

DXレポートの内容を要約すると以下の通りです。

デジタル技術を最大限に活用しビジネスモデルを変革させる

あらゆる産業において、デジタル技術を駆使した新規参入者が登場し、急激に成長し既存の産業が破壊されています。例えば本のインターネット販売から始まったamazonは、今や電化製品や衣類、食料品まで何でも販売する世界最大の小売業に発展しました。

同じく広告・メディア産業ではFacebook・Google、コンテンツ産業ではAppleというように、私たちの生活環境の進歩の裏では、日本の主要産業の破壊が進んでいるのです。
※例えば、近年、インターネットの広告力が非常に高まっていますが、反面、テレビ等の既存メディアは急激に落ち込んでいます。同様に、Appleが大きく関わっている映画・音楽のオンライン配信の発展の裏では、映画館や音楽パッケージ商品市場の衰退が進んでいます。

このように、従来のビジネスモデルは新規参入者によって、あっという間に市場を奪われていくことが珍しくありません。経済産業省が発表した「DXレポート」は、この現状に対する危機感の表れともいえるでしょう。

データの利活用

IoT、5Gの時代に突入すると、データが爆発的に増加します。IoTは、すべてのモノがインターネットに接続されることを意味する概念ですが、例えば、炊飯器や洗濯機といった一般的な家電製品がインターネットに接続されることで、技術的には「使用頻度(量)」や「使用時間帯」といったデータが取得できるようになります。

データの利活用という観点では、炊飯器で例えると「少ない量で、2~3日に一度使用されている」ユーザが多いことが分かれば、それに見合った商品を開発することで、ヒット商品を生みやすくなるでしょう。
同様に、夜、遅い時間帯に洗濯機を使用しているユーザが多いのであれば、「消音性」をウリにした商品の開発が有効でしょう。

このように、データの利活用をするかしないかで、企業の命運は大きく左右されていく可能性があるのです。

レガシーシステムの問題

DXを進めるうえで、企業の大きな足かせになるのが「レガシーシステム」とされています。実は、57ページに及ぶ「DXレポート」全体の3割~4割程度「レガシーシステム」の課題について言及されています。

「レガシーシステム」とは老朽化したシステムのことを指しており、保守・運用が属人化され、機能を追加することも改修することも困難なため、当然、爆発的に増加するデータの利活用もできなくなります。それどころか、担当者の引継ぎすらされておらず完全にブラックボックス化してしまっている企業すら少なくないようです。

この問題の難しいところは、緊急性が低く潜在的であることです。システムの総入れ替えには大きな費用が必要になるばかりか、各部門との調整や開発業者の選定など、一筋縄ではいかない課題を多く抱えており、問題認識はあるものの、結局何年も現状維持、つまりレガシーシステムを使い続けてしまうのです。

2025年の崖

「DXレポート」の副題にもなっている「2025年の崖」とは、このままレガシーシステムを放置した場合、2025年にはレガシーシステムの稼働年数が21年以上となる企業の割合が60%に達し、トラブルリスクも3倍にのぼると推定されるひとつの区切りのことです。

また、社内の有識者の退職や、全国的なIT人材の不足に起因する保守費用の高騰、不具合時の対応時間など、様々なリスクも高まることが示唆されています。

そのため、2025年までにレガシーシステムから脱却する必要性を説いているのです。

最後に

以上、経済産業省が発表した「DXレポート」をもとに、DXについて解説しました。

根本的に、DXとRPAは異なる概念ですが、弊社としては「DXを進めるためにはヒトは考える時間が必要であり、定型的な事務作業からヒトの時間を解放するためにRPAを有効活用したほうが良い」と考えております。

これからの時代、DXや働き方改革への対応、人手不足・社員の高齢化など、企業を取り巻く課題は旧時代とは形を変えながら次々とやってきます。これまでのようにお客様から信頼され、社員から愛される企業活動を続けるため、デジタル活用を進めて共に発展していきましょう。